幸運なことに、ヴァランタンの一番近い隣人は、
10歳違いの従兄弟で、シャンパーニュで最も有名で
最も尊敬を集めるグローワー、
オーレリアン・リルルカンでした。
このようにして、メゾン・ラディの冒険は、
まずルルカンとのコラボレーションから始まりました。
最初のヴィンテージは2018 年で、
ルルカンの著名なリューディ
Les Crayères du levant
レ・クレイエール・デュ・ルヴァンのブドウから
1種類のキュヴェが造られました。
2019年には、ヴァランタンが良く知り、
その栽培を常に高く評価している
Cuchery キュシュリー村の
Regis Possinet レジ・ポワシネとの
コラボレーションもスタートしました。
以降、メゾン・ラディでは2種類の
キュヴェのみが造られています。
メゾン・ラディの哲学は、ブドウが栽培された
それぞれのテロワールの個性と、
ブドウを栽培した造り手の倫理感と努力を、
可能な限り忠実に、ヴァランタンのやり方で
ワインに投影すること。
また、同じく可能な限り最も自然な方法で
ワインを醸造することです。
ラディでは、ブルゴーニュ産バリックでの
野生酵母による醸造。
二酸化硫黄の無添加(もしくは必要最小限の添加)、
無清澄、無濾過、ノン・ドゼなど
人為的な介入を最小限にするなど、
醸造の全ての段階での作業を
徹底的に厳格に行っています。
そして、原料であるブドウに
敬意を持ってワインを造っています。
このような誠実な取り組みから、
ヴァランタンは、パートナーである、
オーレリアン・ルルカンとレジ・ポワシネから
全面的な信頼を得ています。
ヴァランタンは、購入するブドウの
栽培家の貴重な仕事に光を当て、
彼らの努力が認められるようにしたいとの想いから、
各キュヴェのエチケットにブドウを栽培した
グローワーの名前と畑名を明記しています。
シャンパーニュでは、コート・デ・バールに
グランデスタンが登場して以降、新世代達の活躍は、
グローワーだけでなくミクロネゴスに広がりました。
クランデスタンまでは、ブドウの供給元を
明かすことは殆どしませでしたが、
メゾン・ラディはこのように
ブドウの供給元をしっかりと明記。
さらにブドウが栽培されたリュ-ディの名前までも
公開してキュヴェを造っています。
このメソン・ラディの取り組みに触発されて、
2022年に設立されたミクロネゴスのCOSE コーズも
同様のアプローチで、全ての情報を公開して
シャンパーニュを造っています。
ヴァランタンはSNS を全く使っていませんが、
ラディのシャンパーニュは、ランスやエペルネーの
ワインショップやレストランから、
その評判が口コミで一気に広がり、
一躍世界のシャンパーニュのシーンで
スターダムになりました。
現在、イタリア、オランダ、デンマーク、
スウェーデン、オーストリア、スペイン、
アメリカ、カナダなどに輸出されています。
ラディという名前は、
ロムリーの村を流れる「Brunet ブリュネ」という
小川に由来しています。
この川が昔「Raday ラディ」と呼ばれていたのです。
Romery ロムリーとCormoyeuxコルモワイユ、
Fleury-la-Riviere フルーリー・ラ・リヴィエールの
三つの村々を流れているこの小さな川は、
トリボー家が数世代にわたってブドウ畑を
耕作してきた渓谷を形成し、
テロワールとクリマの独自性を投影した
シャンパーニュを生み出す風景を形作ってきました。
このようなことから、この小川へのオマージュ、
リスペクトとして、メゾンの名前をラディと
命名したそうです。
シャンパーニュには、華麗なグラン・クリュの畑が広がる
コート・デ・ブランや
グランド・モンターニュ・ド・ランスの村とは対照的に、
時代に取り残されたような村がまだまだ残っています。
ドン・ペリニヨンゆかりの地、オーヴィレール村の北西、
モンターニュ・ド・ランスの森を超えたマルヌ右岸の
Rive Droit リヴ・ドワット地区にある
Romery ロムリーの村は、まさにその典型です。
この村の名前を世界的に有名にしているのは、
なんといってもオーレリアン・ルルカンの存在です。
日中でも人通りが殆どなく、
とても静かなこの村の佇まいは、
謙虚で物静かながら、情熱を内に秘めた
オーレリアン・ルルカンの性格を
彷彿とさせるものがあります。
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