畑は1か所にまとまっていて合計7ha。
樹齢は古いもので、彼の祖父が1940年代に
植樹した80年を越える区画、
父アルマンドの植樹した40年代が中心。
バルベーラも栽培しているが、
栽培の中心はネッビオーロとなります。
さらにクローンについても古く、ネッビオーロ ミケや
ネッビオーロ ロゼが多く残っており、
樹齢80年の区画では台木を使わず自根で
接ぎ木(プロヴィナージュ)されたブドウ樹も
残っていることに驚きます。
ブッシアに隣接する畑、サント ステーファノは
西向きで日照に恵まれた畑、
泥炭質だけでなく強い砂質が特徴。
非常に薫り高く緻密なタンニン、
熟度の高いネッビオーロが収穫できる畑。
畑では小型のトラクターは使うものの、
多くの仕事は手作業中心に行われており、
非常に几帳面で誠実な
マッスィモの性格がよく表れていて、
すべてのブドウ樹に目が行き届いている
素晴らしい畑。
畑で用いるのは、毎年最低限の銅と硫黄物のみ。
標高のある緩やかな斜面は常に風の通り道にあたり、
病気やカビのリスクから
自然に守られる環境が整っています。
収穫は、ブドウの成熟を見極めることを徹底。
バルベーラで9月末、ネッビオーロに至っては
10月中旬~下旬まで収穫を遅らせるのが基本、
年によってはそれ以上に遅らせることも当然と語る彼。
さらに言えば、そのまま量り売りにするブドウから
収穫を始め、自ら醸造するブドウは一番最後、
健全に成熟した完璧なブドウを
選別して行うという徹底ぶり。
「(カンティーナの)スペースがないから、
多くのブドウは量り売りにするしかない。
だからこそ自分たちで醸造、ボトル詰めするブドウは、
その中で最も良いものにしちゃうよね」と笑う彼。
昨今のバローロの価格高騰により、
量り売りであっても高い値が付くネッビオーロ。
量り売りは彼らにとっても生活を支える
重要な部分でもあります。
醸造については、ブドウの素材の良さを
尊重したシンプルな醸造。
除梗したブドウはステンレスタンクにて
アルコール醗酵を行い、バルベーラ、
ランゲ ネッビオーロで約2週間、
バローロは3~4週間ゆっくりと時間をかけて行います。
伝統のセメントタンクを用いない理由は、
よりクリアな状態でスムーズに
アルコール醗酵~マロラクティック醗酵を行う事を
意識しているから。
「ワインとして完成(安定)するためには、
マロラクティック醗酵をスムーズに、
そして完全に終えることが不可欠。
自分はどうしても収穫が遅くなってしまうため、
冬を迎えて途中で止まってしまう可能性が高い。
もちろんそれは当然の事だけど、
自分のように少量しかワインがない場合、
1次醗酵を終えて温まったワインが、
そのままスムーズにマロラクティック醗酵を
迎えるには、ステンレスタンクがちょうどよい」、
そう話すマッスィモ。
バローロについてはすべて大樽2000~3500Lという
大樽で熟成。
ネッビオーロがバローロに至るために、
最も重要なものは「時間」。
大樽で長い時間を費やすことはもちろんですが、
それと同様にマッシモが重要視するのは、
ボトル内での熟成。
通常のバローロで24~30ヶ月程度、
そのあと、18~24か月とボトル内での熟成。
バルベーラやランゲ ネッビオーロでも
最低12ヶ月以上の時間を取ります。
バローロはもちろんですが、
すべてのワインに通じる果実の純粋さ、
ストレートな果実味に心を奪われます。
そして時間とともに開いてゆく美しさ、
そして一番に感じるのは、マッシモの節々に
感じる几帳面で真面目さを感じる味わい。
バローロという名前である以上、
どうしてもワインに「偉大さ」を求め
意識してしまうのは当然だと思います。
しかし、ティオレのバローロには、
もちろん偉大さを全く感じないワケではありませんが、
それ以上に親しみやすさ、シンプルな美しさ、
身近な魅力を感じるバローロ。
祖父、父の代より収穫したブドウの半数以上は
そのまま量り売り。残ったブドウで醸造しますが、
その中でも半分近くはボトル詰めせず量り売り、
「選りすぐりの最も良い部分だけをボトル詰めする」、
という徹底的に選別された素晴らしいバローロ。
ボトル詰めしたワインのほとんどは、
古くからの顧客の中で取引されていて、
これまでほとんど市場には
出回ってこなかったというのも納得できる味わいです。
昨今の高騰し続けるバローロの中で彼らは、
ある意味「時代に取り残された」存在、素材の良さ、
几帳面で勤勉な畑での仕事、伝統を守りつつも合理的、
そして何より時間を費やしたワイン造り。
あまり良い言い方ではないかもしれませんし、
そこだけを見て欲しいわけではないのですが。
まるで10年前から時が止まったかのような、
市場や流行に左右されないその価格に、衝撃を覚えます。
基本的に生産量も少なく、初輸入のため、
入荷数は決して多くありませんが、
バローロという名前に見合った
素晴らしいポテンシャルと、
素直な魅力、素材そのものの良さを感じるワイン。
改めてバローロという土地の可能性を実感できる
素晴らしい造り手です!
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