このため、トマはINAOの決めた村の
優劣にはこだわらずに、
自分自身が最高であると考える区画の
最高のブドウのみを徹底的に厳選して
シャンパーニュを造ることに決めたのです。
幸いにもドメーヌの畑の平均樹齢は50年。
シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの
古木のブドウが大切に管理・栽培されてきました。
ドメーヌでは、トマが参画した2016年から
栽培をビオに転換しました。
ブドウ畑におけるアプローチは、
持続可能性とバランスを重視しています。
除草剤や殺虫剤は一切使用せず、
カバークロップによって生物多様性を
高く保っています。
綿密なアプローチと細部へのこだわりから
全ての作業は手作業で行われ、
自然のサイクルの調和を心がけています。
認証には拘らず、ビオに加えて、
ビオディナミの要素も取り入れています。
剪定、芽かき、グリーンハーベストなど、
ブドウに最大限の凝縮感と複雑なアロマが残るように
入念な畑仕事が行われています。
トマは「シャンパーニュの 90%はブドウ畑で造られ、
残りは愛情とアッサンブラージュによって決まる」
と言います。
さらに、トマが最も重要視したのが
ブドウの凝縮度です。
通常シャンパーニュでは1株のブドウ木に
10~12房のブドウが生りますが、
ドメーヌでは1株に最大でも2~3房のブドウしか
残さないように厳格な剪定と芽かきを行い、
ブルゴーニュのグラン・クリュのような
品格のある凝縮したアロマとテクスチャ―、
フィネスを備えたキュヴェを造ることを目指したのです。
ブルゴーニュ産の樽を購入するのにも
日本円換算で実に1500万円も投じました。
現在でこそトマとシャルロットが
ドメーヌの経営の全てを掌握していますが、
2016年当初、トマの方法は父の大反対に遭い、
トマは父が管理する畑には
入れてもらえなかったそうです。
ブドウはpH値だけでなく、
味わいにも細心の注意を払い、
最高に熟した状態で収穫されます。
トマは、祖父や父の時代の顧客のために
家業の歴史的ブランドである
ディディエ・エルベールのシャンパーニュを
現在も造り続けています。
ディディエ・エルベールのブランドを含めると
ドメーヌの栽培面積は6ヘクタール弱ですが、
そのうち約3 ヘクタールが
シャンパーニュ・エルベール&CO.ブランドの
シャンパーニュ向けに栽培されています。
しかし、収量は極めて少なく、年間5千本弱の
生産量しかありません。
前述したように、ブドウ木の1株になる
房の数を2〜3房(通常の1/3)に抑えるのに加え、
圧搾においては、
プルミエール・プレス(一番搾り)である
「キュヴェ」の中の中心部分である
「クール・ド・キュヴェ」のみしか使いません。
その他の果汁はディディエ・エルベールの
ブラント向けのシャンパーニュに使う、
あるいはネゴシアンに売却してしまいます。
原酒の醸造は全て野生酵母のみでブルゴーニュ産の
バリック(新樽は用いない)で行われます。
セラーでの介入は最小限に抑え、
自然が与えてくれたものを最大限に
引き出すことのみに留めています。
マロ醗酵は行わず、樽で9ヶ月熟成した後、
ティラージュを行い、
最低3年間シュール・リーの状態で熟成されます。
醗酵から長期の熟成に至るまで、
一切の妥協を許さずにワイン造りを行っています。
こうして造られたのが1000%ムニエ、
1000%ピノ・ノワール、キュヴェXの
3種類のキュヴェです。
2016 年にシャルドネ1000%のキュヴェである
キュヴェXが造られ、続いて2019年に1000%ムニエと
1000%ピノ・ノワールのキュヴェが造られ、
トマは新世代グローワーとしてデビューしたのです。
キュヴェ名に付けられた『1000%』が示す通り、
他のシャンパーニュよりも何倍も凝縮した
果実味と複雑な口当たり、エレガントでフレッシュ、
そして深みと力強さと個性を兼ね備えた
トマ・エルベールのシャンパーニュは、
デビューと同時に世界各国の感性の鋭い
シャンパーニュのインポーターを唸らせ、
輸出マーケットで大ブレイクしました。
弊社もその存在に早くから注目していましたが、
ややアメリカンナイズされた
そのプレゼンテーションに躊躇していました。
しかし、2025年3月にドメーヌを訪問して
試飲したキュヴェに圧倒され、取引を決めました。
今年から日本へのアロケーションを
頂けることになりました。
トマは隣村のリュ-ドのアルチュール・ルリエーブルや
ベレッシュ兄弟とよく交流していますが、
ワイン造りにおいては独自の道を歩んでいます。
リューディのキュヴェやブリュット・ナチュールが
新しい主流となる中、ブリュット・ナチュールは求めず、
リューディではなくアッサンブラージュで、
品格のある凝縮した風味を追求しています。
王冠で熟成させるよりもクリーミーな泡が
得られるという理由から、
2024ヴィンテージからはコルクでの熟成にも
着手するなど、トマはさらに細部をチューニングし、
より精緻でエレガント、
そして凝縮感のあるワイン造りに情熱を注いでいます。
10年前の2016年、24才で初めて自身の
シャンパーニュのキュヴェを醸造したトマは
今年まだ34才。
これからのさらなる進化が期待できる
新世代グローワーです。
深みと個性を備えた
エルベール&CO.のシャンパーニュは、
既にデンマーク、オランダ、イタリア、ベルギー、
オーストリア、英国、アメリカなどに輸出されています。
自由で活力に満ちたシャンパーニュの
エネルギーを具現するグランド・モンターニュ・ノールの
新世代グローワーの登場です。
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