シャンパーニュに新たな女性グローワーが
デビューしました。
グランド・ヴァレのマルイユ・シュール・アイに
本拠を置くエレーヌ・シャルボーです。
1992 年生まれのエレーヌは、
2020年、28才の時に家業のドメーヌに参画。
代々続く実家のシャンパーニュとは別に、
自身の名義で3種類のシャンパーニュ
(2020ヴィンテージ))を醸造して、
2024年にデビューしました。
エレーヌの実家のドメーヌは
マルイユ・シュール・アイにあるギイ・シャルボーです。
エレーヌは、3世代続くこのドメーヌの長女として
1992年に生まれました。
子供の頃のエレーヌは、畑に連れていかれても、
ブドウやワインにはあまり興味がなかったそうです。
しかし、成長していく中で、
ワインのことが頭を離れることはなく、
ディジョンのビジネススクールではワインと
スピリッツのダブルディグリーを取得しました。
その後、外の世界を見たくてオーストラリアと
ニュージーランドで1年を過ごします。
ニュージーではチョコレートの工房で働いたそうです。
休日にはワイナリー巡って試飲をして
過ごしていたそうです。
その後、フランスに帰国したエレーヌは、
ブルゴーニュのブシャールで研鑽。
続いてルクレール・ブリアンでも働きました。
そして、アヴィーズのリセ・ヴィティコールで
成人向けのプログラムを受講し、
醸造のBTSを取得しました。
並行してペウ・シモネでインターンシップも行いました。
しかし、エレーヌには8才年下の弟がおり、
いずれ弟が実家を継ぐと考えていたエレーヌは、
家業に参画するかどうか進路について悩みます。
その時、相談した友人から
「エレーヌ、君はもうすぐ 30 才になるよね。
今のエネルギッシュな勢いと、物事を変えたいという
気持ちがあるのなら行動するのは今だよ。
40才になってからじゃないよ。」と
言葉を掛けられたそうです。
この友人の言葉で、家業に参画すると決めたエレーヌは
2020年から両親と共にドメーヌで働き始めます。
エレーヌは直ぐに栽培や醸造も含めて
ドメーヌを大きく変革したいという希望を
両親に伝えました。
しかし、「曾祖父の代から続いてきたドメーヌのやり方を
大きく変えることはできない」と
両親に猛反対されてしまいます。
そこで考え続けた末に、エレーヌはお互いが共存できる
アイデアを両親に提案します。
それは、ドメーヌの一部の区画をエレーヌが選抜し、
そのリュー・ディのブドウからエレーヌ自身の名義で
シャンパーニュを醸造するというものです。
もちろん、栽培と醸造は全てエレーヌが
自身の責任において担って
自由に行うというものです。
両親はエレーヌの熱意に動かされ、
このプロジェクトを了承してくれました。
こうして、当初からビスイユの
リュー・ディに焦点を当てたいと
考えていたエレーヌは、2020 年にビスイユの
3つのリュー・ディから、
それぞれ単一品種のブドウで
3種類のキュヴェを醸造したのです。
続く 2021 年は冷涼で困難な年であったため、
ビスイユのブドウ単一でのキュヴェは1種類のみしか
醸造することができず、マルイユや
アヴネ・ヴァル・ドールの厳選した
ブドウを含めたキュヴェをリリースしました。
エレーヌの畑の栽培はビオロジックで、
調剤などビオディナミの手法も取り入れています。
収穫後の休眠期には羊を放牧して雑草駆除を行い、
同時に羊の糞がそのまま肥料になるため、
ハーブや野菜などを畑に撒いて栽培しています。
エレーヌがビスイユに焦点を
当てたのには理由があります。
それは、ビスイユのテロワールが
極めて特殊であるからです。
グランド・ヴァレの東の端に位置するビスイユは、
モンターニュ・ド・ランスの南の端の村
トゥール・シュール・マルヌのすぐ西側に、
そして、コート・デ・ブランの最北の村オワリーの
すぐ北側に隣り合わせています。
つまり3つの地区(ヴァレ・ド・ラ・マルヌと
モンターニュ・ド・ランスとコート・デ・ブラン)の
まさに中心に位置している村なのです。
土壌は、白亜質の基盤岩を粘土質土壌が覆っています。
少し離れた場所にあるフィリポナの著名な
「クロ・デ・ゴワス」と同じテロワールです。
しかし、シャンパーニュでは、
隣接するアイやマルイユの名声があまりにも高く、
ビスイユを名乗るグローワーが非常に少ないことから、
同等のポテンシャルあるテロワールを備えたビスイユを、
多くのシャンパーニュ・ラバーに
フューチャーしたいとエレーヌは考えたのです。
エレーヌの実家のドメーヌはマルイユ・シュール・アイの
町の中心にあります。
ビスイユ、マルイユ・シュール・アイ、
アヴネ・ヴァル・ドールに
約20haの畑を所有しています。
ドメーヌは道を挟んで、フィリポナが
クロ・デ・ゴワスのためだけに建てた醸造所の
真向かいにあります。
そしてエレーヌの醸造所は、
そのフィリポナの建物の地下に広がる
広大なセラーをフィリポナとシェアしています。
同世代で友人のポール・ゴッセや
アントワーヌ・ブヴェなどに触発されたエレーヌは、
区画ごとの醸造と熟成に
木樽(新樽は用いない)のみを使用し、
ブドウ畑の管理から醸造工程に至るまで、
人為的介入を最小限に抑える
アプローチを採用しています。
これによって、テロワールと
個々の区画の価値を最大限に高め、
それぞれの個性を極めて正確に際立たせる
醸造を行っています。
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