畑はカンティーナの周囲12ha、標高350~420mとパンツァーノの中腹に当たる、
 樹齢は30~50年。
 栽培しているブドウは昔から変わらないサンジョヴェーゼ、カナイオーロ、コロリーノ、
 チリエジョーロ、マルヴァジアネーラ、マルヴァジアビアンカ、トレビアーノ。
 パンツァーノの土壌的特徴、標高、風は、果実に豊かな酸と透明感を与える、
 クラッシコのエリアでも極めて「上品さ」、「偉大さ」を感じさせる土地。
 彼はこれまで続いてきたモンタリアーリの栽培と
 醸造のスタイルを一切変えることなく、貫き通している。
 (現代の効率的な栽培技術、醸造方法を行うためには莫大な設備投資と、
 土壌改良、再植樹、、、etc。
 いったいそんな資金投資をすることに何の意味があるのか?
 デヴィッドにとっては全く理解できない事だった。)
 醸造は伝統的な大型のセメントタンクによるマセレーションと醗酵を行い、
 途中一切の温度管理を行っていない。
 モンタリアーリのカンティーナは、夏場は温度がかなり高くなることもある
 (いわゆる醸造学的には、あまり好ましくない状態)、
 しかし彼はこの温度の上昇さえも、モンタリアーリのワインの伝統に違いなく、
 このカンティーナで、毎年「夏という温度変化」を感じながら熟成していくことが、
 「モンタリアーリのワインとして、最重要な事」という考えを持つ。 熟成は6000L~ 8000Lという大型の木樽に移し、クラッシコで30か月、
 リゼルヴァに至っては60か月を超える熟成。果実の持つ骨太なタンニン、
 長い時間により丸みと旨味を感じるようになる。
 彼がこだわるのは100年前から何一つ変わらないキャンティの醸造方法である。
 また、ヴィンサントも伝統堅固の醸造法を今も続ける。
 アパッシメント(陰干し)した果実を圧搾し、
 カラテッリと呼ばれる小樽(50~100L)に移し入れ、
 セメントで完全に密封。そしてカンティーナ2階にある熟成小屋で
 10年以上の歳月をかけて
 醗酵と熟成を繰り返していく
 (夏場は40℃以上、冬は5℃以下、カラテッリは50年以上繰り返し使い、
 前のオリを残したまま使われる。
 この“ワインの母”とも呼ばれる、受け継がれたオリによって
 再醗酵と酸化熟成を繰り返す。
 醗酵が終わり、完成するまでには早くても10年以上の歳月を必要とする。)。
 長い年月によってのみ生み出される、
 伝統のヴィンサントを現在でも味わうことができる。
 頑ななまでの伝統への愛情、そして変わらないことへの強い決意、
 彼は正しくモンタリアーリを引き継ぎ、
 精神さえ受け継いだ素晴らしい造り手といえる。
 100年前の味、200年前のキャンティ、それを現在にも変わらず見せてくれる、
 そして土地の料理、リッボリータやビステッカフィオレンティーナ、
 猪や鹿の煮込みとの相性は申し分ない、
 むしろその相性こそ、キャンティの本来の姿だと、彼が証明してくれている。
 エヴィーノさんの資料より
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